仙台高等裁判所秋田支部 昭和28年(う)167号 判決
原判決が大蔵事務官山本正士の差押てん末書を証拠としていることその本文と差押目録との間(記録四一丁裏と四二丁表の間)に契印がないことは所論のとおりである。弁護人は右契印を欠くため該差押目録は大蔵事務官山本正士が差押えたときの差押目録であるかどうか不明であり、証拠能力がないと主張するのでこの点について考察する。刑事訴訟規則第五十八条によれば公務員が作るべき書類には毎葉に契印しなければならないと規定されているのであるから右差押てん末書はこの規定による方式を欠いているのであるが、右方式を欠いた一事によつて直ちに書類を無効となすべきではなく、その効力の有無は同一公務員が真正に作成した一体の文書と認められるかどうかによつて決すべきであり、このような一体の文書と認められる以上契印を欠いていても無効と認むべきではない。
右差押てん末書の本文と別紙差押目録とをみるとその間に契印はないのであるが本文の上欄には⑨と丁数が書いてあり、別紙差押目録の上欄には⑩と丁数が書いてあつて丁数は連続しているばかりでなく、本文の「差押物件の措置」と題する欄には別紙差押目録記載のとおり差押えたという趣旨の記載があり又本文の山本正士名下の印影と同一の印影が右差押目録の他の部分に存在しているのであるから、右差押てん末書の本文と別紙差押目録とは大蔵事務官山本正士が真正に作成した一体の文書であることを認めるに十分である。したがつて同目録は同事務官が差押えたときの差押目録であることは勿論であつて、契印を欠いても無効となすべきではないから証拠とすることの同意がある以上証拠能力を有するものというべく、この点について原審が作成者である同事務官を証人として尋問する必要はない。論旨は理由がない。